「春の祭典」はロリン・マゼール指揮/クリーブランド管弦楽団がベストかも・・その1

2023年4月23日にこのブログにアップした内容に関して変更させてください。アンタル・ドラティ指揮/デトロイト交響楽団の演奏(アナログ盤)が現在私が所有していえるものの中ではベストだと書きました。数種類のCD盤とアナログ盤を試聴した結果なのですが、その中に今回ご紹介するロリン・マゼール盤も入っていたにも拘らず正直あまり真面目に聴いていませんでした。しかし、ロリン・マゼール盤の演奏がクリーブランド管弦楽団で、録音されたホールがセヴェランス・ホール(セヴェレンス・ホールとも呼ばれています)ということが判明したので、これはちゃんと聴かなくてはいけないなということで、少し音量を大きくして聴いたところ・・・これが凄い演奏だったのです。指揮者ジョージ・セル氏(以下セル氏)の功績をここでご紹介しなければいけません。1946年の秋よりセル氏のクリーブランドでのシーズンが始まったとのこと。しかし楽団員達にとってはこれは恐怖の始まりだったようです。初年度に ” 不平ばかり言う” という理由でコンサートマスターを入れ替え、チェロ、クラリネット、オーボエの首席奏者も入れ替え、練習の厳しさに耐えかねて去った演奏者等々でセル氏の就任後最初の6年間で9割が新しいメンバーになったとのことです。しかし、この時期に加入したメンバーはほとんどやめることなく職責をまっとうしたとのことです。(山田 真一氏著/ ” オーケストラ大国アメリカ ” より)

まあ、相当なワンマンだったのでしょうが、これはひとえに良い演奏を聴衆やリスナーの皆さんに届けたい一心でということが楽団員にも伝わったのでしょう、クリーブランド管弦楽団はセル氏のもとで世界トップクラスのオーケストラになったとのことです。そしてセル氏はフランチャイズホールである旧セヴァランス・ホールの改修についても深く関わり、新セヴァランス・ホールを全米でも最高水準のレベルに押し上げとのこと。そしてこのホールは第一級のレコーディング・スタジオとしても通用するホールになったということです。(山田 真一氏著/” オーケストラ大国アメリカ ” より)そして、セル氏の踏ん張りのおかげで世界トップクラスのオーケストラになりました。そして後に続く指揮者としてピエール・ブーレーズ氏(この方も” 春の祭典 ” をこのオーケストラで録音していますが、セヴァランス・ホールではなくマソニック・オーディトリウムと表記)、そして今回ご紹介するロリン・マゼール氏、クリストフ・フォン・ドホナーニ氏など著名な指揮者が後を継いでいます。ストラヴィンスキー作曲「春の祭典」は特徴的なメロディがあるわけではなく、複雑なリズムの集合体のような管弦楽で、まさにオーディオ的醍醐味を味わえる楽曲です。激しく展開するバスドラム、ティンパニ等の打楽器、楽譜にどのように書かれているか想像もつかないほどのヴァイオリン、チェロ、コントラバスなどの弦楽器、そしてトランペット、ホルン、クラリネット、ピッコロ等の管楽器の唸り・・・ストラヴィンスキーはやはり凄い作曲家です。

テラーク録音の特徴的な点を挙げてみます。高橋康夫氏によるライナーにはこう書かれています。以下、一部を勝手に紹介させていただきます。” ・・・・本拠地セヴァランス・ホールのステージで演奏するクリーブランド管弦楽団の輝きに満ちた響きは、ステージから離れてセットされた3本のショップス無指向性マイクによって、ものの見事にキャッチされている。”  このマイクのセッティングこそがテラーク録音の特徴になっています。レーベルはもちろんTELARC、CD番号はPHCT-1232、1980年5月に録音されたものです。

とはいえ、冒頭で紹介したアンタル・ドラティ氏指揮、デトロイト交響楽団のアナログ盤を今一度聴いてみると、アナログ盤の実在感のある音は捨て難い魅力があります。ただ、この「春の祭典」は小型スピーカーで聴く時は、低域をブースト(強く)しないとちょっと再現するのはちょっと厳しいのではないかと。