J.S.バッハ「マニフィカト」は瑞々しい魅力に満ち溢れています。

イーグルスをしばらく聴き続けていましたが、急に教会(宗教)音楽が聴きたくなり、久方ぶりにJ.S.バッハ「マニフィカト  変ホ長調」のアナログ盤を聴きました。私はキリスト教徒ではありませんし、所謂教会に通ったこともありません。十年以上前にロンドンのセントポール大聖堂に観光目的で行ったくらい、あとは、クリスチャンの方の葬儀で横浜のある教会に参列させていただき、配られた歌詞カードを見ながらですが、日本語で聖歌を歌った記憶があります。まあそれはさておき、キリスト教徒ではない私がJ.S.バッハ作曲の「クリスマス・オラトリオ」や「マタイ受難曲」、そして今回ご紹介する「マニフィカト 変ホ長調」などを聴いて感動するのはなぜか?

今回ご紹介する「マニフィカト  変ホ長調」のアナログ盤のライナーに執筆されている磯山  雅氏が「AERA MOOK/新約聖書がわかる」の中の ” 新約聖書と音楽 ” (P156~158)で述べられている文章が心に刺さるのです。少し長くなりますが勝手に抜粋させていただきます。

” 当時の文献をいくら研究しても明らかにならないのは、バッハの現代に呼びかける生命力の強さである。考えてみれば、時を経て過去のものになってしまった思想や文献によって、今に生きる音楽のすばらしさを説明できるはずはない。(中略)イエス・キリストを知り、その周辺の人間たちの姿を知り、彼らの行為が福音書のテキストに定位されてゆくプロセスを知ることによって、バッハの音楽はますます身近なものになる、といのが私の掛け値のない実感である。それはバッハ自身が、当時の限られた知識の中でこそあれ、生き生きとした人間的メッセージを聖書から読み取り、それを音楽に託しているからである ” と。

磯山氏のもう一つの著書「バッハ=魂のエヴァンゲリスト」(講談社学術文庫)の中で ” マニフィカト” について述べられている箇所を抜粋させていただきます。” バッハの<マニフィカト>は、実質的には、合唱、重唱、独唱曲からなる一種のカンタータである。しかし、その音楽はきりりとひきしまって輝かしく、バッハ作品中の珠玉ともいうべき、瑞々しい魅力を発散している。” この瑞々しさは、私の勝手な解釈でありますが、ソプラノ歌手エマ・カークビーさんの声質によるものではないかと勝手に思ってしまうくらいエマ・カークビーさんの可憐で清澄な歌声がなんとも切なく、同じソプラノのジュディス・ネルソンさんの正統派ソプラノの魅力と相まってこの曲に教会音楽として、深みをもたらしていると思います。そして、この「マニフィカト 変ホ長調」は、3時間を超える演奏時間、そして内容的にも重い ” マタイ受難曲 ” に比べて聴きやすい?と言えます。演奏時間も短めですので、気軽に宗教音楽に浸ることができます。先のことですが、クリスマスの時こそふさわしいのではないかと思います。

指揮者であるサイモン・プレストン氏はイギリス、ボーンマスに生まれ、王立音楽アカデミーとケンブリッジ・キングス・カレッジに学んだ後、1962年にオルガニストとしてデヴュー。クリストファー・ホグウッドの主宰するエンシェント室内管弦楽団との協演によるハイドン、ヘンデルの宗教音楽の録音があるとのことです。また、私の大好きなソプラノ歌手エマ・カークビーさんは現在75歳ということで、大分お年を取られたようですが、私が所有しているヘンデル/オラトリオ「メサイヤ」ではやはり可憐な歌声を聴かせてくださいます。なお「マニフィカト  変ホ長調」のレコードレーベルはL’OISEAU-LYRE、発売元ポリドール、レコード番号はL28C-1789です。

クォリティの高い小型スピーカーで聴くのも捨てがたい魅力があります。YAMAHAさんのプリメインアンプA-S2000、アナログプレイヤーはTechnics  SL-1200 mk4、MCカートリッジはオルトフォンMC-20、スピーカーは英国のスピーカーブランドであるセレッションA-compactから流れてくる音は大型スピーカーに引けをとりません。スピーカーケーブルはファイアーバードB/Bタイプ、長さは2.5mのバイワイヤリング接続となっております。高級なオーディオシステムでなくとも感動できるのです。小型スピーカーならではの音の定位の良さで瑞々しい音世界が展開していきます。そして、低域もそれなりにしっかりと再現できているところはバイワイヤリング接続の影響かなと私は密かに思っております。