前回のブログでは、ヘンリー・パーセル唯一の歌劇「ダイドーとイーニアス」をご紹介しました。パーセルは短い生涯の中で歌劇以外に膨大な数の作品を書き残しました。英国国教会の典礼に用いられるANTHEM(アンセム)、王室の祝賀や式典のための様々な音楽、劇音楽、オルガン曲、各種の合奏用作品などです。今回ご紹介するのは、1694年4月におこなわれたメアリー女王の誕生日祝典に演奏された「メアリー女王の誕生日のためのオード」(A面)と、「メアリー女王の葬送のための音楽(B面)です。ヤフーオークションで数年前に落札したアナログ盤ですが、経年変化で盤質が多少反っておりますが、アナログ盤ならではの音の質感が感じられます。イギリス王室の系図で在位期間を調べると、題名の ”メアリー女王 ” は ” メアリー2世 ” のことで、有名なブラッディ・メアリー(メアリー・スチュアート)のことではありません。系図には ”メアリー ”と名のつく方々が多いので紛らわしいです。
A面に収められている「メアリー女王のためのオード」は女王の誕生祝賀式にふさわしい大規模なもので、フランス風序曲から始まる計9曲の独唱、重唱、合唱、そして器楽のリトルネッロで構成されています。リトルネッロとは、ソロと合奏が交代しながら進んでいく音楽の形式です。オードとは英国の王室一族を讃える音楽のことで合奏、独唱、器楽とバラエティ豊かで、まさに英国王室の優雅さそのものを実感させてくれます。「メアリー女王のためのオード」の音楽の世界観はいかにも英国王室の” 祝賀感 ” を感じさせるもので、第一曲目のシンフォニー(フランス風序曲)は題名に”フランス風”と付けられていますが、曲の空気感といいますか、そこはやはり英国を感じます。2021年に亡くなられたエリザベス2世の誕生祝賀式でも演奏されたのでしょうか?そして、B面の「メアリー女王の葬送のための音楽」は当然といいますか曲調は女王の葬送にふさわしい曲調になっていて、前述のエリザベス2世が亡くなられた時にも演奏されたのでしょうか?テレビ中継された時にきちんと聴いておけばよかったと反省しております。さて、メアリー女王(2世)の在位期間は5年と大変短いもので、当時蔓延していた天然痘に罹患されたようです。メアリー女王の葬送式が行われたのは1695年3月5日で、女王の棺を載せた馬車の前で女王の葬送式のためのマーチが鳴り響いたとのことです。
前述のエリザベス2世の葬儀は素晴らしいものでした・・素晴らしいとは失礼な言い方かもしれませんが。英国BBCによってテレビ中継時のカメラアングル等入念な準備がされていましたよね。英国王室の葬儀をちゃんと見たのは初めてのことでした。英国王室の祝賀式、そして葬送式の空気感に思いを巡らせてみるのもいいのではないでしょうか。
このレコードの録音の日時は記載されておりませんが、それほど新しい録音ではないと思います。かといって、それほど古いものでもないと思います。指揮はジョン・エリオット・ガーディナー氏、演奏はモンレヴェルディ合唱団及び管弦楽団、エクアーレ・ブラス・アンサンブル、レコードレーベルはエラート(ERATO)、レコード番号はREL-3174になります。また、違う指揮者、オーケストラによるCD盤(曲目が同じではないかもですが)もおそらく発売されていると思います。ご興味のある方は探してみてください。