バロック期のイングランドの作曲家、ヘンリー・パーセル(1659〜1695年)は、ヴァイオリン合奏付アンセムや宮中祝賀音楽(オード)など、バロックならではのジャンルをイングランドに開花させ、さらに芝居のための音楽のほか、正真正銘のオペラも一作残しました。(AERA Mook「音楽がわかる。」那須輝彦氏執筆/ようこそクラシック音楽<バロック>)それが今回ご紹介する「歌劇/ダイドーとイーニアス」です。那須氏の文章を続けます。このオペラはイタリア音楽の歌謡性とフランス音楽の舞踏性を吸収してイングランド独自のメランコリーで味付けしたもので、とてもおしゃれ。切ないほど美しいメロディの宝庫です。パーセルは天性の歌心をもったソングライターであり、特に ” 英語 ” という言語を魅力的に聴かせる技に抜群のさえ(センス?)をみせました。しかし、1695年、36歳という若さで病没してしまいます。私がこのCD盤を聴いて感じた事を言わせていただくと、このオペラの曲の中になんとなくケルト的?なメロディを感じるのは私だけでしょうか?また、バッハのクリスマスオラトリオを彷彿とさせる旋律があったりして、飽きのこない歌劇になっています。
歌劇「ダイドーとイーニアス」について紹介されてある文庫本があります。磯山 雅氏著「バロック音楽 名曲鑑賞辞典」(講談社学術文庫1805)の中で述べられているところを抜粋させていただきます。
名旋律とはなんだろう。私に言わせると、「こうゆう旋律をどうすれば思いつけるのだろうか、不思議だ」という感想を聴き手に呼び起こすものである。本書の登場する作曲家達の中で、そんな旋律の随一の書き手は、ヘンリー・パーセルではなかろうか。そんなパーセル・メロディの宝庫ともいうべき作品が ” 歌劇「ディドとエネアス」” である。
このバロック音楽 名曲鑑賞辞典の中にはバッハを初め、パーセル、モンテヴェルディ、コレッリ、リュリ、テレマン、ベルゴレージ、ヘンデルなどバロック期の作曲家達の曲が多く紹介されています。
私が所有しているCD盤のタイトルは「ダイドーとイーニアス」です。発音的に違いはありますが同じ作品です。このオペラの筋書きは省かさせていただきますが、ウィキペディアなどを参照していただければと思います。このCD盤は聴けば聴くほど、このオペラの良さがわかってくるといいますか、はかないメロディがあるかと思えば、なかなか激しい悲しみの声楽部も聴くこともできます。オーディオ的に非常が録音が良く、打楽器の力強い音、バロック歌手ジモーネ・ケルメス、デボラ・ヨークの千変万化の表現力、などなど。ただし、” 古楽のオペラ ” というかバロック期のオペラですので、ヴェルディ、プッチーニなどのイタリアオペラやモーツァルトのオペラとはかなり音楽感、世界観が違うのでご注意を。
●総指揮/テオドール・クルレンティス、/演奏 アンサンブル・ムジカエテルナ(古楽器使用) CD盤のレーベルはAlpha(アルファ)レコード 、CD番号 Alpha 140 ●演奏/アンサンブル・ムジカ エテルナ ●録音2007年4月、ノヴォシビルスク国立歌劇場 ●合唱/ニューシベリアン・シンガーズ