今から42年前は会社に勤め始めて3年目で、仕事にも慣れてきたとはいえ、まだまだ一人前ではありません。忙しい合間を縫って、アナログ盤を買い集めて聴いていました。そんな中、当時発売されていたサントリー・リザーブというちょっと高級なウィスキーのTV-CMに今回ご紹介するピアニスト、アレクシス・ワイセンベルク氏が登場されていました。私も単純なのでこのピアニストのアナログ盤を買おうということでレコードショップの店員さんから差し出されたアナログ盤がこの「ショパン/ピアノ協奏曲」でした。これが私とショパンとの初めての出会いでした。1929年生まれのワイセンベルク氏はブルガリア・ソフィア出身のユダヤ人ピアニストで、めざましいテクニックで人気を博されたとのこと。第二次大戦中は収容所に入れられ苦難の日々をおくられたようです。その後いろいろあって、1946年にニューヨークのジュリアード音楽院に学び、翌1947年にレーヴェントリット国際コンクールで優勝、同年ジョージ・セル指揮ニューヨークフィルと共演デビュー。なかなか波乱に富んだ経歴です。そして、2012年スイスにて長い闘病生活の後、お亡くなりになったとのことです。
このアナログ盤についてですが、録音の日付は記載されていません。たぶん45年くらい前(あるいはもっと前?)になるのではないかと。ということで音質は正直あまり良くありません。バックのオーケストラはパリ音楽院管弦楽団、指揮は実力派の名指揮者といわれたスタニスラフ・スクロヴァチェフスキーという方です。ただ、このアナログ盤はA面にピアノ協奏曲 第1番、B面に第2番の両方がかなり無理に?収められているためにレコードの溝幅が狭い?ので盤にゴミが少しあると、同じ箇所を繰り返し再生するので常時綺麗な状態の盤にする必要があります。まあ、そんな訳でこのピアノ協奏曲はCD盤をお薦めします。
まず、お薦めのNo.1はピアノ&指揮 クリスティアン・ツィメルマン、オーケストラがポーランド祝祭管弦楽団のCDが素晴らしいです。2枚組になっており、DISC1に第1番、CISC2に第2番が収められています。出版の順序の関係で1番と2番が入れ替わっているので、1番と呼ばれているのは本来2番ということになります。私は2番も結構好きな協奏曲ですが、やはり1番の協奏曲としての完成度は高いと感じます。偉そうですみません。このCD盤のライナーに寄せられたクラシック音楽の評論家である宇野功芳氏の文章を一部ご紹介します。「これは驚くべき名演奏だ。今までに聴いたいかなる名ピアニスト、ロン、フランソワ、ルービンシュタイン、アルゲリッチもこのツィメルマン盤に比べれば、太陽の前の星のように光を失うだろう。なにより素晴らしいのはオーケストラ・パートである。とかく、管弦楽部分がつまらないと言われ、オーケストレーションが下手と言われ続け、大幅にカットして演奏されることが多かったショパンのコンチェルト(協奏曲)だが、とんでもない!ツィメルマンの弾き振りによって、極めて雄弁、極めて美しい音楽としてここに生まれ変わったのである。まさに歴史上の大事件と言わねばならない。」大変な褒めようです。” 歴史上の大事件 ”とはなかなか凄い言い方ですが、実際試聴してみると確かにオーケストレーションが素晴らしく、またツィメルマン氏自身がポーランド出身でショパンコンクールで優勝している方なので、ピアノの演奏技術はいうまでもありません。ロンというのはロン・ティボー氏のことで、フランソワというのはサンソン・フランソワ氏のことでしょうか。そして、お薦めのNo.2はマレイ・ペライアのピアノ、ズービン・メータ指揮のニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽盤です。ペライア氏はユダヤ系アメリカ人ピアニスト/指揮者で、1972年のリーズ国際ピアノコンクールでアメリカ人初の優勝者になった方です。若き日のペライア氏の弾く、詩情豊かなショパンピアノ協奏曲 第1番は、ツィメルマン氏の弾くピアノとはまた違った魅力があります。ちなみにこのペライア盤は以前、アナログ盤のご紹介をさせていただいたもののCD盤になります。(2022年9月13日にアップしたブログ参照)以下、レーベル、CD番号をお伝えいたします。
●ツィメルマン盤・・・レーベル/ドイツ・グラムフォン、CD番号/UCCG-9650/1 459 6842 1999年イタリア、トリノにて録音●ペライア盤・・・・・レーベル/CBSソニー、CD番号は不明です。私が所有しているCD盤はヤフオクで落札したもので、ライナーが入っていなかったため。ちなみにアナログ盤のレコード番号は20AC 1591 1979年 ニューヨーク/エイヴァリー・フィッシャーホールにて録音
尚、ショパンはピアノ協奏曲を2曲しか作曲していません。1番と2番のみです。ペライヤ氏が受賞したリーズ国際ピアノコンクールはイギリス北部の都市リーズで開催される国際的なピアノコンクールです。原則3年ごとに開かれとのことで、過去の優勝者はマレイ・ペライヤ氏、日本人ピアニストでは内田光子氏、小川典子氏などなど・・・