ヘンデル「水上の音楽」/ジョージ・セル指揮/ロンドン交響曲楽団のアナログ盤について

バッハが生まれる1ヶ月前、1685年2月23日に同じドイツ、ハレという町でヘンデルは生まれたとのことです。結局、両者は相見えることはなかったとある本に書いてありました。バッハは一度ヘンデルに会おうとして手紙を出したみたいですけれども、結局は都合がつかず・・・バッハは ” 音楽の父 ” と呼ばれ、ヘンデルが ” 音楽の母 ”と呼ばれることになろうとは当時の2人は想像すらできなかったのでしょうね。” 音楽の父 ” と言われるのはバッハの音楽を愛する者として納得でき、また ” 音楽の母 ” と言われるヘンデルについては「オラトリオ/メサイア」を聞けばこちらも大いに納得できるものです。

さて、A面に収録されている「組曲/水上の音楽(WATER  MUSIC)」の成り立ちについてはネットに詳しく載っているので、私がくどくど説明はしません。ただ、バッハの活動範囲が生まれ故郷の中部ドイツにほぼ限られ、仕事場は教会や礼拝堂で奏でる楽器はオルガンに対して、ヘンデルは同じドイツでハノーヴァー貴族の宮廷楽長だったにも関わらず、英国王室から寵愛を受け、ロンドンに居着いた等、インターナショナルに活動をしていたということが両者の曲調の決定的な違いではないかと思います。ルター派の信者だったバッハは生真面目(悪い意味ではなく)、ヘンデルは英国で活躍するやり手の作曲家(それなりの苦労はあったみたいです)・・・私の中ではそんなイメージです。レコード盤に針を落とし、演奏が始まった途端に大袈裟な言い方で申し訳ありませんが、なにかロンドンで聴いている(この時代のロンドンなど行ったことはないですが)ようなイメージが湧きました。B面には「王宮の花火の音楽(THE  ROYAL  FIREWORKS)」が収録されており、こちらもなかなか魅力的な仕上がりになっていまして、B面最後には「歌劇/クセルクセス」より ” ラルゴ ” が素晴らしい出来です。ハンデルは歌劇も創っているのですね。とにかく、このアナログ盤は1961年に録音されたものなので、最新デジタル録音のようにきめ細やかさとか音の分解能とかそうゆう価値基準で推し量ってはいけないと思います。アナログの音の佇まいが気持ちいいのです。

指揮者であるジョージ・セルは1897年ハンガリー、ブダペストで生まれ、11歳の時にピアニストとしてウィーン交響楽団と共演など華々しく活躍、1946年よりアメリカ合衆国のクリーブランド交響楽団の音楽監督に。ここから四半世紀にわたりこの楽団を世界の5本の指に入るまで引き上げ、未だに ” セルのオーケストラ ” と呼ばれているみたいです。このアナログ盤のレーベルはLONDON、録音された場所はロンドン、キングスウェイホールで、ロンドン交響楽団に客演した時の録音になります。レコード番号はPOJL-9007、ちなみに、別刷りの紙シートに ” この盤は重量級の重さ(180g)がありますが、オーディオマニア向けの極端な大振幅カッティングではありません ”ということが書かれています。180gあるのは、盤の反りと不要な振動を抑えるためだそうです。