英国人であるクリスファー・ホグウッド指揮/エンシェント室内管弦楽団、オックスフォード・クライスト・チャーチ聖歌隊が醸し出す”空気感”はまさしくアナログ盤ならではのものだと強く感じます。1979年、9月に録音されたこの盤はレコードもオーディオ機器も一番元気な時代に世に出たアナログ盤だったのではないでしょうか。”ヘンデルの最高傑作のみならず、古今のオラトリオの最高傑作”の評価を得た”メサイア”については、有名な”ハレルヤ・コーラス”以外にも数々の美しい旋律が随所に散らばっていて大いに楽しめます。ヘンデルは”音楽の母”、バッハは”音楽の父”と小学校の音楽の先生が仰っておりましたが、なるほど言い得て妙だなと思います。ヘンデルのこの”メサイア”は確かに女性的な曲調で、自由に舞う蝶のようですし、バッハの音楽はなんとなく”頑固にスタイルにこだわる作曲家?”という意味では男性的です。もちろんいい意味ですが。
この”メサイア”のCDは数種類所有していますが、全体に流れる”空気感”の点でアナログ盤が勝っているというか、アナログ盤の方に手が伸びてしまいます。最新のデジタル録音されたCDは曲のディティールを克明に再現することは得意ですが、なにか音が薄っぺらい感じがします。これは再生装置(デジタルプレイヤー)の問題かもしれません。私の勝手な解釈を言わせていただければ、決定的な違い・・それはレコード録音技術にしても、オーディオ機器にしても”一番元気だった頃”の録音だったからではないかと思っております。”時代性”という言葉でカバーできるかはわかりませんが、指揮者をはじめ当時の各演奏家や合唱団のみなさん、ソリストの皆さんの熱く&ほとばしる情熱、勢いなどが、レコード盤の溝に刻まれていると思うのです。ホグウッド指揮のこの盤はCDも発売されています。残念ながら私は所有していません。ただ、アナログ録音をCD化したものなので、最新のデジタル録音板に比べてアナログ盤の”空気感”を感じられるかもしれません。
作曲家ヘンデルが”メサイア”(Version 1?)を完成させたのは、1741年9月、Version 2 ?である”捨子養育院版”を完成させたのが13年後の1754年です。ヘンデル自身、これはなんとしても納得できるものを完成させなければという強い想いがあったのだと私は思っています。別の理由があったかもしれませんが、このオラトリオの成り立ち等については”メサイヤ”で検索していただければと思います。このアナログ盤では独唱者の面々も素晴らしい歌唱力で、特に私が好きなソプラノ歌手であるエマ・カークビー(この方も英国人)さんの歌声はまさに天使の歌声というか可憐な歌声で、老年にさしかかった私をやさしく癒してくれます。しかしながら、このアナログ盤は3枚組になっているので、全曲聴くとなるとレコード盤を取っ替え引っ替えするのが正直なところ大変面倒なのです。まあ、その面倒さも含めての”アナログ盤”なのかなと。CDだと大体2枚組なので、全曲を通して聴くにはCDの方がラクです。添付のアナログ盤の写真と同じデザインのジャケットになっているので、探し易いので興味のある方は是非お聴きになってみてはいかがですか?
先日、テレビで”名曲喫茶”が今ちょっとしたブームになっていて、若い女性達の間でちょっと流行っていますみたいなことを伝えていました。レコードプレイヤーにスピーカーはタンノイ(英国スコットランドの大変歴史のあるスピーカーブランドでクラシック音楽の再生では有名)、アンプは真空管タイプかマッキントッシュ(米国ニューヨーク州ビンガムトンのこちらも世界的に有名なアンプブランド)の組み合せで聴くクラシック音楽はデジタルの音に疲れた耳には心地よいのかも。”メサイア”も名曲喫茶でレコード演奏されているのかもしれません。