チェロを弾くために生まれてきたような英国出身のチェリスト、ジャクリーヌ・デュ・プレ(愛称:ジャッキー)の名前を聴いた時に思ったのはフランスの方なのかなと。ご両親がフランス風の名前が好きだったのかもしれません。チェロに興味を持ったのは3歳の時、英国BBCの番組でチェロの音色に魅了され、5歳でロンドン・チェロ・スクールに通い、10歳の時にチェロの名教師ウィリアム・プリースの門下生となり、16歳でデヴューするまで師匠プリースは”ジャッキー”の心の支えになり、”私のチェロのお父さん”と呼んで慕っていたとのことです。1987年にロンドンの自宅で世を去った時、彼女は42歳の若さでした。そして最期を看取ったのもプリース氏だったとのこと。(エドワード・エルガー作曲「チェロ協奏曲 ホ短調 作品85」のライナー:三浦淳史氏による)
先日、NHK Eテレの ” クラシックTV ” の再放送で英国の作曲家エドワード・エルガーの特集を観た時(一回目の放送も観ましたが)に、ロンドン交響楽団をバックに ” ジャッキー ” の武士道を彷彿させるというか、何かに取り憑かれたような鬼気迫る映像が一部ですが放映されていました。その時の曲目がエルガー「チェロ協奏曲 ホ短調」。指揮者ジョン・バルビローリ氏は、” ジャッキー ” の良き理解者で、気さくな人柄で楽団員たちから慕われるような方だったようです。主役のチェロに対してバルビローリ氏の包み込むような暖かいサポートを感じます。
さて、天才チェロ奏者 ” ジャッキー ” の代表作であるエルガー作曲「チェロ協奏曲 ホ短調 作品85」ですが、いきなりチェロ独奏から始まるこの曲は最初の数小節でぐいっと引き込まれる魅力があります。魅了的ではありますがどこか悲しさを感じてしまうこの曲は、私的にはちょっと気持ちが落ち込んだ時や雨の日に聴いて、より落ち込むというのが理想のパターンかなと。演奏はロンドン交響楽団、録音はロンドン/キングスウェイ・ホール、1965 年8月。
そして、もう一曲収録されているのが、同じ英国の作曲家フレデリック・ディーリアス作曲「チェロ協奏曲」です。この協奏曲には各楽章はなく、5つの楽章が切れ目なく演奏するように指示されているのが特徴的です。エルガーに比べると多少現代音楽に寄っている感じがします。なにか夢の中で風景画をみているような印象・・指揮はバルビローリ氏と同じ英国人、マルコム・サージェント氏、演奏はロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団、録音はロンドン/アビーロード・スタジオ、1965年1月。サージェント氏との相性もなかなかのもので、” ジャッキー ” のチェロも生き生きした演奏になっています。
CDレーベルはEMI CLASSICS、CD番号はTOCE-59063です。
ジャクリーヌ・デュ・プレが体に異変を覚えたのは1971年、病名は多発性硬化症とよばれている病気で効果的な治療法は当時確立されておらず、四肢の麻痺、歩行困難、失明、意識障害など様々な症状が表れてくるとのことです。(三浦淳史氏による)