とにかく長く暑い夏でしたが、最近ようやく涼しくなってきました。音楽をちゃんと聴く気になる秋の到来です。私の大好きなエルトン・ジョンの2ndアルバム「ELTON JOHN」の一曲目 ” Your Song(僕の歌は君の歌)” から始まるこのアルバムは私にとって秋の夜長にまさにピッタリです。そして秋にピッタリと言えばクラシックであります。ショパンのピアノ・コンチェルトとか、ブラームスのシンフォニーとかいろいろあるのですが、ここはグスタフ・マーラー作曲「大地の歌」はいかがでしょうか?
私はこの「大地の歌」のCD盤を3枚持っています。音楽評論家である岡 俊雄氏がライナーに書かれていますが、” 今は亡きドイツの名指揮者オットー・クレンペラーは今世紀最高の指揮者であると言わしめたクレンペラー盤(EMI CLASSICS)です。岡氏の言われる ” 今世紀最高 ”という評価は的確かと思います(偉そうですみません)。録音されたのは1964年ですから今から60年くらい前のことですが、ART(アビイ・ロード・テクノロジー)のデジタル処理技術が大変素晴らしく古さを感じさせません。演奏はニュー・フィルハーモニア管弦楽団。1964年ロンドンのキングスウェイ・ホールと1966年ロンドンのアビーロード・スタジオの2箇所で録音されているようです。メゾ・ソプラノはクリスタ・ルートヴィッヒ、テノールはフリッツ・ヴァンダーリッヒ。後述する指揮者ジュゼッペ・シノーポリ氏もこの管弦楽団の指揮を1984年から1994年に渡って音楽監督に就任しました。(この時期はフィルハーモニア管弦楽団の名称が回復しています。)全体を通して感じるこの交響曲の、西洋音楽とは距離を置いた中国的、あるいは東洋的な音世界は、マーラーの他の作品には感じられないものです。CDレーベルは東芝EMI、CD番号はTOCE-59020で、ARTマークが入っている盤がお薦めです。
もう一枚はジュゼッペ・シノーポリ指揮、演奏はドレスデン国立管弦楽団(ライナーではそう記載されています)。アルトはイリス・ヴェルミヨン、テノールはキース・ルイス。録音は1996年ですから比較的新しいと言えます。CDレーベルはドイツ・グラムフォンで ” 4Dオーディオ・レコーディング ” によってナチュラルな音と共にレンジが広く、ホールの自然な響きが綺麗に再現されています。CD初期によくあったデジタル臭さもなく、鮮明な音なので、オーディオ的に音質を重視したい方はシノーポリ盤はピッタリかなと。CDレーベルはドイツ・グラムフォン、CD番号はPOCG-10041、録音はドレスデン、ルカ教会です。指揮者のジュゼッペ・シノーポリは1946年イタリアのベネツィア生まれで、パドヴァ大学で心理学、精神医学を学ぶ傍らマルチェッロ音楽院で作曲を専攻。なかなかユニークな経歴です。2001年、ベルリン・ドイツ・オペラでヴェルディのオペラ ” アイーダ ” を指揮中に心筋梗塞で倒れ急逝、54歳の若さだったようです。
そして3枚目のCD盤はブルーノ・ワルター指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のものです。イギリスのアルト、カスリーン・フェリアー、テノールはウィーン生まれのユリウス・パツァーク。名指揮者であるブルーノ・ワルターはベルリンに生まれたユダヤ系ドイツ人で、マーラーに師事し強い影響を受け、第二次世界大戦後は米国に渡り、85歳でお亡くなりになったようです。また、アルトのカスリーン・フェリアーはこの録音の1年後に41歳の若さで癌でお亡くなりになったそうです。ただ、この盤は1952年に録音されたものでモノラル録音ということで、歴史的な録音ではありますが、オーディオ的にはなかなか厳しいものがあります。ただ、アルトのフェリアーさんの悲痛ともいえる歌声は一年後に迎える自らの ” 死 ” を予感させるものでしょうか?・・・レーベルはLONDON/DECCA、CD番号はPOCL-2814です。
私は今、小型スピーカーでこの「大地の歌」を、プリメインアンプでそれほど大きい音ではない状況で聴いています。大型スピーカーで大音量で聴くのもいいですが、涼しくなったこの季節に私がお薦めしたい聴き方はニア・フィールド・リスニング・・仕事机とかに小型スピーカーを置いて、いわゆる箱庭的音世界を味わうと聴き方です。次回はこの「大地の歌」についての各楽章を岡 俊雄氏のライナーからの抜粋をもとに紹介しようと思います。