フランス映画「ボレロ/永遠の旋律」を観て以来、モーリス・ラヴェルの作品をよく聴いている毎日です。ラベルの作品全て所有している訳ではありませんが、是非聴いていただきたいCD盤があります。ピエール・ブーレーズ指揮、演奏はクリーブランド管弦楽団で、ラベル晩年に作曲されたピアノ曲「高雅にして感傷的なワルツ」のオーケストラヴァージョンです。オーケストラ演奏にしては演奏時間は短く(大体15分ちょっと)、もともとピアノ曲なので小品ともいえる作品ですが、大太鼓とワルツのリズムが心地よく、クリーブランド管弦楽団の実力が窺い知れる演奏で、オーディオ的にもピラミッドバランスの音域が楽しめます。録音は1994年11月、クリーブランドと書かれていますが、録音されたホール名は記載されておりません。この楽団の本拠地セヴェランス・ホールなのでしょうか。この管弦楽団の常任指揮者だった故ジョージ・セル氏主導で、このホールは1958年に改修されたのち、レコーディング機材をそのまま持ち込んでも豊かな音が得られる第一級のレコーディングスタジオにもなったとのことです。(山田 真一著/「オーケストラ大国アメリカ」より)ということで録音が大変素晴らしいので、当然ホールの響きなど音は良いです。
このCD盤の一番の ” 売り”は、「ピアノ協奏曲 ト長調」であることは、CDジャケットを見れば一目瞭然、ショパン国際ピアノコンクールで優勝したクリスティアン・ツィメルマンがピアノということからもわかります。もちろん、ピアノ協奏曲 ト長調から聴こえて来る超絶的ピアノテクニックにはびっくりしますが、このピアノ協奏曲からクラシック音楽の専門家の方々も仰っているようにジャズのテイストが感じられます。演奏旅行で米国を訪れた際に、ニューヨークのジャズ・クラブでの黒人ジャズプレイヤーの演奏に耳を傾けている・・映画にはそんなシーンがありました。それとこの協奏曲には、ガーシュイン的テイストも感じます。
さて、このCD盤にはもう一曲、魅力的な作品「左手のためのピアノ協奏曲 ニ長調」が収められています。すみません、ライナーから勝手に引用させていただきます。「第一次世界大戦で右手を失ったオーストリアのピアニスト、パウル・ヴィットゲンシュタインはラヴェル、リヒャルト・シュトラウス、プロコフィエフ他著名な作曲家に左手だけのためのピアノ作品を委嘱したが、その中でもこのラヴェルの作品は、圧倒的多数の演奏頻度を誇っており、それはひとえに作品の高度な質に帰せられよう。「ボレロ」のような作品を、巧妙なオーケストレーションだけで聴かせてしまうほどの作曲技術の冴えを見せていたラヴェルが、ここで左手だけという制約に、いつも以上に闘志を燃やしたのは想像に難くない。」(長木誠司氏によるライナーからの一部引用です)なお、この曲目のオーケストラはロンドン交響楽団、録音されたホール名は記載されていません。ロンドンで録音されたのは1996年7月となっています。録音されたホールは出来るだけ記載していただきたいと思います。
ジャケットデザイン的には、ブーレーズ氏とツィメルマン氏が並んだ何の変哲もない写真を使ったイマイチの出来ですが、CD盤としての価値は非常に高いと言えます。レーベルはドイツ・グラムフォン、CD番号POCG-10138です。大型スピーカーで聴けば確かにオーディオ的快感を感じられますが、録音が素晴らしいので質の良い小型スピーカーでもかなり満足できると思います。