前回のブログで書かせていただきましたが、牛田智大さんのラフマニノフのピアノ協奏曲の演奏が素晴らしかったことはお伝えしました。翌日、興奮覚めやらず新幹線で東京町田の自宅に戻り、早速同じラフマニノフピアノ協奏曲第2番ハ短調のCDを聴きました。ピアニストは過去にショパン国際ピアノコンクールで1位を獲ったことのある、クラシック界的には現在世界最強のピアニスト、クリスティアン・ツィメルマン、小沢征爾さん指揮、ボストン交響楽団のものです。役者は揃った演奏です。いきなり結論を言ってしまうのはどうかと思いますが、私は全く感動できませんでした。これまで数回このCDを聴いた事はあり、そこそこ気に入った演奏なのにです。ツィメルマンのピアノのテクニックがあまりにも完璧すぎて機械的になってしまい、この曲の情感を感じられなかったなど理由はいろいろあるかなと思います。ピアノコンクールがあった浜松アクトシティ大ホールの中でのピアノの力強い響き、そしてピアニストをもり立てる東京交響楽団員のみなさん、指揮者の方の気迫溢れる演奏、やはり生のコンサートは音だけではなくまわりの聴衆の皆さんとの一体感を感じる事ができる点、ヴァイオリンのなんとも言えない生の音の質感、目に見える部分ではヴィオラとチェロは楽譜的に連動することもあるのかとか、何回も言うようでしつこいですがバスドラム(大太鼓)の低域の凄さなど、自宅で一人私のたいしたことのないオーディオ機器から出る音と比べてもしょうがないと思います。クラシックの演奏会に頻繁に聴きに行っておられる方にとっては当たり前のことかもしれませんが、こんなでかいピアノがあるの?とか、音程的?という点でヴォイオリンとチェロの間にはヴィオラという楽器が必要だったのだなあとか、たまにはこうゆうコンサートに行かないといけないよねという思いです。
これらの演奏を聴きながら、趣味としてのオーディオはこれからどうなるのか、どうあるべきなのか、スピーカーケーブルというオーディオ機器の中では主役とはいえないパーツと私はどう向き合っていかなくてはいけないのかなどいろいろ考えてしまいました。自宅のオーディオ機器でコンサートホールで奏でられる音を再現することは100%無理だと思います。モノーラルパワーアンプをマルチで大きめのスピーカーを駆動してもです。ほんの少し近づけることはできるかもしれませんが。しかしながら、コンサートホールのようなリスニングルームなど家にはない私たちは”想像力”を持って自宅のオーディオ機器から奏でられる”音”に向き合えば、コンサートホールの迫力ある音を聴くこととは違うステージで、”音”ではなく”音楽”を感じることができるのではと思います。彼がどうゆう気持ちでこの協奏曲を作曲したのか、そもそもラフマニノフってどんな人だったの?そういったラフマニノフの人となりを知ることでこの協奏曲に寄り添うことができるのではと私は思います。ラフマニノフは以前極度のノイローゼにかかったけれども当時催眠療法で有名なニコライ・ダール博士という方の力で快復し、このピアノ協奏曲第2番を書き上げ、そして1901年に自身のピアノで初演したことなど、天才的でピアノの名手でもあったラフマニノフも順風満帆の人生ではなかったみたいです。